8月西部例会 前嶋和弘氏(上智大学総合グローバル学部教授)

 日本海政経懇話会西部例会が25日、鳥取県米子市久米町のANAクラウンプラザホテル米子で開かれ、上智大総合グローバル学部の前嶋和弘教授が講演した。「相互関税」を含めて矢継ぎ早に大統領令を出す米国のトランプ大統領の思惑に触れ、日本が今後、取るべき立場について語った。
 現代アメリカ政治を専門とする前嶋氏は、米国にとって関税政策は本来、「タブー(避けるべきこと)だった」と批判。第1次大戦で敗戦したドイツに高関税を課したことが、ナチス誕生につながったという、米国内での共通認識に言及した。
 また、トランプ氏就任以前の共和党は「自由貿易」を重視してきたものの、所得が伸びない中間層の不満が、自由貿易は損をするというムードを生み、結果的に極端な関税政策を訴えるトランプ氏の支持拡大につながったと強調した。
 一方、トランプ氏が矢継ぎ早に打ち出す大統領令については根拠法が半世紀前のもので、議会が立法した後に出す行政命令が本来の在り方だと指摘。上下両院で共和党と民主党がきっ抗しているため、「(通常の手続きを)迂回(うかい)する手段に出ている。議会を通さない張りぼての大統領令」と厳しい見方を示した。
 その上でトランプ政権以降を見据えつつ、自由貿易や国際協調を重視する国々との連携を深める必要性を説き、「日本は世界でアメリカに代わる自由主義のリーダーにならなければならない」と訴えた。